読み始めたのだが、これがめちゃ面白い。
まあ、面白いと言っても、エンタメ本ではないので、ゲラゲラ笑えるとかハラハラするとか、
そういう類ではないのだが。
副題にある通り(「海外で子どもを育てている保護者のみなさまへ」)、日本語と外国語と
二重三重のことば環境で暮らす子ども達の発達において留意すべき点について書かれたもの
で、リサーチ結果の資料も豊富で参考になる。
経験上ふむふむと我が身と照らし合わせてみることもあれば、カナダでのイマージョン教育
の例など、初めて知ることもあった。
ちょっと覚え書きメモを。
・初めてのことばは、まず「親」のことばで、「親」と「子」の絆をつくる。
・トータルな生活体験を通して、親の文化の担い手としてふさわしい行動パターンや価値観を
学ぶ。親の文化の担い手としてのアイデンティティも身に付ける。
・日本的な考え方、行動パターン、価値観を子どもにまともにぶつけ、母文化の担い手になる
ことを強いる、という姿勢でよい。
・周囲の大人があまり神経質にならずに、与えられた環境でできるだけのことをし、それで
足りないところは20代の初めまでにどこかで挽回するというような、余裕のある長期的構え
が必要である。
・バイリテラシー:ふたつのことばで読み書きできること
バイカルチュラル:行動面でも心理面でも違和感のない両刀使い
・文を読んで内容を理解するというのは、文字一つ一つを読むのと違って、かなり高度の
認知力と分析力が必要である。
・母語の読みの基礎のない場合は外国語の読みの習得にかなりの時間がかかる。
逆に、母語の読みの基礎がしっかりしていると、外国語の読みも順調に伸びる。
ちょうどバイオリンからチェロに楽器を替えるのと同じように、新しい道具に慣れれば
あとは同じこと。
・互いにプラスの相関関係
日本語がよく読める=英語(現地語)もよく読める
・ことばそのものを教えようとしない
子どもが喜ぶ活動に巻き込み、覚えてもらいたいことばを唯一不可欠な道具として使う
・教科学習でことばの保持
ことばの学習(会話練習、作文、読解練習)に限定せず、社会や理科などを日本語で学ぶ
・補習校=週末イマージョン
週1日だけでも日本語を学習言語として使う
・授業で何を習ったか、どのくらい知識を吸収したかということよりも、週末1日でも日本人
の教師がいる学校で、日本人の級友といっしょに日本語で学び、それに父親も母親も色々な
形で協力・支援を惜しまないという事柄自体から学びとることは多い
・日本人の集団の一員であることを肌で感じる
・子どもの心の中の日本語のステータスをなんとかつりあげる(→誇り)
統計調査を元にしているので、全てのケースがこうということはないだろうし、私の側に
「自分が読みたいような情報を拾って自分の出したい結論に導くように読む」という傾向
が多分にあるとは思うが、かなり納得した。おススメの一冊である。
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〜海外で子どもを育てている保護者のみなさまへ〜
中島和子 著
トロント大学名誉教授/元名古屋外国語大学教授・日本語教育センター長
母語・継承語バイリンガル教育研究会会長/カナダ日本語教育振興会名誉会長
第1刷:1998年
600円
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