2012年3月27日火曜日

水先案内人としての学習指導要領

春休みで、補習校の宿題が出ないのをいいことに、家にある問題集やダウンロードしたもの
などを中心に「せっかく覚えたひらがなを、季節の語彙にからめて定着させる」「カタカナの
練習」「算数の文章に慣れる」「音読」といった内容の取り組みを、できる範囲でしている。

「ひらがなに親しもう!」「これって何の字だ?」という段階であれこれ工夫して作っていた
ような楽しい課題はもう作りようがないので(文字の反復練習を楽しくできる工夫なんか知ら
ない)、出来合いの課題を使うしかないのだが、目的にかなうものを選んで与えているので、
自分が舵を取っているという実感があり、すこぶるいい感じ。(学校で出された宿題を「これ
をやることになってるから」とやらせるのは、いつまでたっても苦手なのだ)

せっせ、せっせとこまめが漕いで、母が舵取りする小舟。
でも、時々、どこを目指してどの辺りを進んでいるのか、見失いそうになることもある。
「ひらがなをマスターする」という非常にわかりやすい目標をひとつクリアした段階で、
「さて…次は?」とふと立ち止まる。
学校や通信教材に頼らない家庭教育で陥りがちな状況だと思う。

その後に待ち受けているカタカナや漢字はともかく、だ。
それらの文字を覚えることも大事だが、所詮はツールを増やしていっているに過ぎない。
そのツールでいったい何をしようとしているのか?

教材の引出し」にずらりとあるように、無料で手軽にダウンロードできる教材もいっぱい
あるが、めくらめっぽうやりまくっても仕方がない。
何かこう、灯台のような、導きの目安になるものがあるといい。

で、「学習指導要領」。
日本の学校の進度にこだわらなくても良い海外在住児の親にこそ有用な、「ひとつの目安」。
「何を、何年生までに」というところはやんわりと無視して、「目標に至るためのステップ
の組み方」として見れば、大いに参考になると思う。

まず、抽象的な高い目標(ビジョン)があり、そこに至るための具体的な目標(ミッション)
があり、そのために何をどのように指導したら良いか(ストラテジー)、が書かれてある。

ビジョンとは、将来こうありたいという姿のことだ。
指導要領にはこうある(元の文には「国語」とあったのを「日本語」と直した):

  日本語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,
  伝え合う力を高めるとともに,
  思考力や想像力及び言語感覚を養い,
  日本語に対する関心を深め
  日本語を尊重する態度を育てる。

ふむふむ、なるほどね。けっこうなこっちゃ。これが満たされたら大したもんじゃわい。
で、そのような境地に至るために、その初歩の段階ではどうしたら良いか?
そこで、以下のようなミッションが登場。かように育てるべし、と:

 (1)相手に応じ,身近なことなどについて,事柄の順序を考えながら話す能力,
   大事なことを落とさないように聞く能力,話題に沿って話し合う能力を身に付けさせる
   とともに,進んで話したり聞いたりしようとする態度を育てる。

 (2)経験したことや想像したことなどについて,順序を整理し,簡単な構成を考えて
   文や文章を書く能力を身に付けさせるとともに,進んで書こうとする態度を育てる。

 (3)書かれている事柄の順序や場面の様子などに気付いたり,想像を広げたりしながら
   読む能力を身に付けさせるとともに,楽しんで読書しようとする態度を育てる。

ほほう、なるほど。
でも、これってけっこう高度な完成形って感じ。
しかも、「進んで○○しようとする」だなんて、ずいぶん積極的だなあ。
どうしたらそんな風になれんの?

で、例えば、「話すこと・聞くこと」では、

 ・身近なことや経験したことなどから話題を決め,必要な事柄を思い出すこと。
 ・尋ねたり応答したり,グループで話し合って考えを一つにまとめたりすること。

…とかいったような、場面毎のストラテジー(アプローチ)が提案されている。
「書くこと」「読むこと」についてもしかり。

じゃ、そういうアプローチを実践するには、こういう課題があったらいいよなあ、とか、
こういう場を設定してやったらいいよなあ、とか、実際の授業だったりコミュニケーションの
場だったりが提供しやすくなる、と。


また、「教材を選ぶ際の留意点」についても書かれていた。

  国語に対する関心を高め,国語を尊重する態度を育てるのに役立つこと。
 イ 伝え合う力,思考力や想像力及び言語感覚を養うのに役立つこと。
 ウ 公正かつ適切に判断する能力や態度を育てるのに役立つこと。
 エ 科学的,論理的な見方や考え方をする態度を育て,視野を広げるのに役立つこと。
 オ 生活を明るくし,強く正しく生きる意志を育てるのに役立つこと。
 カ 生命を尊重し,他人を思いやる心を育てるのに役立つこと。
 キ 自然を愛し,美しいものに感動する心を育てるのに役立つこと。
 ク 我が国の伝統と文化に対する理解と愛情を育てるのに役立つこと。
 ケ 日本人としての自覚をもって国を愛し,国家,社会の発展を願う態度を育てる
   役立つこと。
 コ 世界の風土や文化などを理解し,国際協調の精神を養うのに役立つこと。

…いや~、理想の火は限りなく高く清く燃ゆる…というか、初等教育バッチリ受けた私にも
果たして上記の点は備わってるんかいな???(冷や汗)
強く正しくなんか生きちゃいないけど(笑)、日本語と日本文化を、その一部でもいいから
子に渡そうと考えてる時点で、まあクリアしてるってことかな。

補習校、日本語塾、通信教育の教材など、諸々の場では上記ビジョンミッションについて
バッチリと吟味した上で効果的なアプローチを実践されているんだと思う。
家庭で、あるいは少人数のグループで手探りでやっている人にこそ、長期的に日本語学習を
続けてゆく際の目安として、目を通しておいて損はないと思った。

(当然、他の教科のもある。図工のミッションは…「喜び・面白さ・楽しさ」だ!)

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