2011年2月1日火曜日

オランダの小学校

こまめは5歳。現地校の1年生である。

オランダでは4歳になると小学校に行き始める。
日本の感覚からすると「えっそんなに早く?!」と思うかもしれないが、誰も彼もが幼稚園に
行くのだったらそれを統合しちゃえ!というようなことらしい。
父の時代には幼稚園として分かれていた。

入学式のようなものはなく、4歳になった時点で三々五々登校を開始する。
12月生まれのこまめは、冬休み明けの1月から通い始めた。
その時点では実はまだ「0年生」という扱いで、夏休み明けの新年度、秋に始めた子も春に始めた
子も、みんな揃って1年生となるわけである。

こまめが通っているのは、公立のモンテッソーリ小学校。
異年齢混在クラスとなっており、0〜2年生(4〜6歳)が低学年クラス、3〜5年生(6〜
9歳)が中学年クラス、6〜8年生(9〜12歳)が高学年クラス。
進度に合わせて飛び級も留年もあるので、入学時期がバラバラなのと合わせて、日本の学校の
ような「横並び」意識とは無縁と思われる。

小学校は、通学はもちろん義務だが、選択は任意であり、選択肢の幅は広い。
・立地で選ぶ:最寄りのニュートラルな公立小学校
・宗教で選ぶ:カトリック系、プロテスタント系、イスラム系など
・使用言語で選ぶ:インターナショナル、日本人学校、フランス人学校など
・教育メソッドで選ぶ:モンテッソーリ、イエナプラン、ダルトンスクール、シュタイナーなど。

これらの多くが公立なので、特殊な私立(例えば日本人学校)のように授業料を払う必要がない。
学校としての質を一定に保つために、日本で言うところの文科省にあたる教育文化科学省の傘下に
ある教育監査庁という組織の査察が定期的に入る。

学校施設は日本に比べてあっさりしている。
広大な運動場やプールなどない所がほとんど。そもそも北国で雨も多いので、屋外での体育という
概念がない。もちろん天気がよければ休み時間に校庭で遊べるが、カリキュラムとしては
成立しないということだろう。夏でもかなり涼しいので、大人用でも屋外プールというものは
見かけない。
体育館がない学校もある。そういう所の生徒は、体育の時間にはみんなでぞろぞろと付近の体育館
まで歩いて行ってるようだ。
お昼ごはんは帰宅して食べるかお弁当なので、給食室もない。
母の通った日本の公立小学校を思い出すと、上記施設に加えて、実験装置の揃った理科室や、
楽器の並んだ音楽室、それに調理器具を備えた家庭科室まであった。当時はそれが当たり前だと
思っていたが、なんという充実ぶりだろう。

ハコがちがえば中身もちがう。
何がちがうかというと、メンタリティーが一番ちがう。
日本では入園入学に際して事細かな持ち物指定や綿密かつ懇切丁寧なオリエンテーションがある。
それに従っていれば安心、外れていないかと不安にもなるので、「横並び」の刷り込みでもある。
対してオランダでは、一応始業時間や学校の理念などを記した学校のパンフレットをもらうが、
その程度。上靴や体操服については、どんな物が望ましいか、などのガイドラインすらない。
こまめの学校は10時のおやつ(果物)とお昼のお弁当を持参することになっているのだが、それも
当初はあいまいで、飲み物を2つ持たせたら良いということは後になってわかった。
よほど不適切でない限りそれぞれの家庭の判断に任せられているということは、子どもの自主性や
自由な選択を推進する上でも役立っているのだろうが、日本式に慣れている自分には、おぼろげで
不明瞭なこと甚だしく、当惑した。

メンタリティーのちがいに大きく関係しているもうひとつの習慣は、掃除である。
日本の小学校では、自分たちの教室は自分たちで掃除する。前述の母の学校では全学年で縦割り
グループを組織して、昼休みの後に学校中を掃除していた。
オランダでは、使ったお道具などは当然自分たちで片付けるが、教室やトイレなどの掃除は放課後
やって来る業者まかせ。これは、後々の公共心に大いに影響していると思う。
日本式では、「公共の物=みんなの物」という意識が育つのに対し、オランダ式(おそらく欧米
ではほとんどそうではないか?)では「公共の物=誰のものでもない物」と感じてしまっても
無理はない。
「どうせ自分たちできれいにしないといけないのだから、きれいに使おう・大事に使おう」と
いう意識がこちらの人たちには薄く、駅や公園など公共の場にはゴミが散らばっている。
(その割に環境問題に熱心な人が多いのは、正義感とかヒューマニズムとか別の理由によるの
だろう)
個々の発達と個人の考えを尊重するオランダ式の教育には魅力も多いが、この点に関してだけは
残念である。

4 件のコメント:

  1. こんにちは。6月からオランダで生活を始める家族です。今後の参考にとブログを拝見しました。我が家には7歳の男の子と5歳の女の子が居ますが両親が日本人で現地校に通わせるのは大変でしょうか?折角の海外生活ですので、何でも経験させてあげたいと思ってます。

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  2. コメントありがとうございます。
    ご両親が日本人とのことですが、ご家庭でオランダ語は話されますか?
    もしまったくない状態で現地校に転入されるとなると、順応力のある子ども
    とはいえ、相当なストレスが予想されます。
    (逆のケースで、日本に一時帰国する際の体験入園/入学でストレスを感じ
    通園/通学をいやがる子も中にはいるという話をどこかで読みました)
    授業内容を理解できないことや、年齢相応の学習意欲がうまく満たされない
    ことがストレスになるようです。
    土曜日の補習校などでその辺をカバーしていくことも選択肢としてあるかも
    しれませんね。
    ご質問への回答としては「無理ではないが簡単でもなさそうだ」という感じ
    でしょうか。もちろん、お子さんの性格にもよると思います。

    他にもいろいろ質問等ありましたら、個人的にメール下さい。
    (左上プロフィール参照)

    在蘭邦人向けサイト「ばいばいねっと」の掲示板で質問されるのも手ですよ。
    経験者のお話が聞けるかもしれません。
    http://www.baibainet.com/cgi-bin/baibbs/baibaibbs.cgi

    6月、オランダは一番いい季節です。滞在、楽しんで下さいね!

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  3. おまめさま。
    ご回答ありがとうございます。
    「無理ではないが簡単でもなさそうだ」には納得です。
    個人的にメールさせていただくかもしれませんが、その節はよろしくお願いします。

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  4. >匿名さんへ
    日本人のあまりいない国や地域に赴任されるケースもたくさんありますし、
    まったく無理とも思いません。オランダにも一定数おられると思います。
    慣れてしまえば大人よりも子どもの方が格段に柔軟にコミュニケーション
    できるでしょうし「案ずるより産むが易し」的なことはあるでしょう。
    ただ、特に最初は、楽しいことばかりでもないかもしれません、その辺の
    サポートをお忘れなく…ということが言いたかったのです。
    いずれにせよ、いい学校が見つかるといいですね。

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